ケイシー・アフレックとルーニー・マーラ主演『A GHOST STORY』。新しい映画文法によって描かれる死後の世界。

誕生から100年以上というその歴史のなかで、数多くの映画が作られてきました。そしてこれまでの数多の作品の最小公約数として、“映画らしい語り口”というものが形成されてきました。今回紹介するデヴィッド・ロウリー監督による『A GHOST STORY』は、従来の映画の語り口から外れるような、新しい映画なのではないかと感じます。

〜STORY〜
アメリカ・テキサスの郊外、小さな一軒家に住む若い夫婦のC(ケイシー・アフレック)とM(ルーニー・マーラ)は幸せな日々を送っていたが、ある日夫Cが交通事故で突然の死を迎える。妻Mは病院でCの死体を確認し、遺体にシーツを被せ病院を去るが、死んだはずのCは突如シーツを被った状態で起き上がり、そのまま妻が待つ自宅まで戻ってきた。Mは彼の存在には気が付かないが、それでも幽霊となったCは、悲しみに苦しむ妻を見守り続ける。しかしある日、Mは前に進むためある決断をし、残されたCは妻の残した最後の想いを求め、彷徨い始めるー。

ゴースト(幽霊)と言えば、ホラーというのが常套ですが、この映画のジャンルはホラーではまったくありません。シーツを被ったゴーストの目線で物語が描かれるという斬新な設定で、そのビジュアルも、目の部分だけ穴が開いているシーツをかぶったというもので、とても愛らしい。

こちらは北米の映画会社「A24」によるものですが、この名前を聞いてピンと来たひとは、なかなかの映画好きと言えるはず。というのも、この会社は『ムーンライト』『レディ・バード』など、話題作を続々と配給し続けていて、タイトルロールの前に「A24」というロゴが、スクリーンに映し出されるのが、いわば“いい映画”の証のようになっているからです。それを裏付けるかのように、サンダンス映画祭の観客賞を筆頭に、世界各国の映画祭でノミネート&受賞し、映画好きがマークしている米映画批評サイト「Rotten Tomatoes」では91%という大絶賛を受けた話題作です。

世界から最も注目を浴びる同社が選んだ次の題材は、斬新ながらもどこか懐かしさを感じさせるシーツ姿のゴーストが主人公の物語。これまでありそうでなかった、ゴーストの視点から見た「死後の世界」。死んでしまった者の魂は、その悲しみは、いったいどこへ行き着き、どのように消化されるのか? 自分のいなくなった世界で、残された妻を見守り続ける、ひとりの男の切なくも美しい物語『A GHOST STORY』は、11月17日(土)に全国ロードショーとなります。

俳優陣にも実力派がそろっています。

不慮の事故死を遂げ、シーツ姿のゴーストとなって彷徨い続ける夫を演じるのは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したケイシー・アフレック。夫に先立たれ、悲しみに暮れる妻を演じるのは『キャロル』でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞したルーニー・マーラ。本作の監督デヴィット・ロウリーの『セインツ -約束の果て-』でも共演した、ふたりの超実力派俳優です。

フイナムでは、今回の詩的な幽霊映画をつくりあげた監督、デヴィット・ロウリーに作品のこと、出身のテキサスのこと、A24のことなどについてインタビューしました。映画鑑賞の後のタイミングにでも、下記をぜひチェックしてみてください。

ーこの物語の出発点は、監督がテキサスにとどまるか、ロサンゼルスに移るかという激論を夫婦でしたことが発端だとお聞きしました。監督にとって、テキサスはどんな場所でしょうか?

デヴィット・ロウリー監督:僕にとってはホームだね。ここでずっと暮らしてきたし、一番落ち着く場所だ。テキサスのスピリットや美しさが気に入っているんだ。自分の中の原風景というのが、テキサスにある。ここの風景や空気が自分のイマジネーションを掻き立ててくれるんだ。カリフォルニアやニューヨークにいるのとは全然ちがう。僕にとっては、ストーリーを作るのに重要な場所と言える。

ーMがパイを食べたり、Cの幽霊が照明を明滅させたりと、この映画で表現される感情は言葉ではありません。それが独特でした。映画の中で感情を表現するというのは重要なシーンだと思います。

デヴィット・ロウリー監督:僕が映画を作る上で常に気をつけているのは、悲しみを忠実に描くということなんだ。これまで、僕は祖父母を亡くしてはいるんだけど、自分にとってとても近しい人を失ったことや、大切な人を突然亡くすという経験はない。それでも、そういった事がいつでも起こりうるということを意識している。パイのシーンでは、いかにフィジカルに、悲しみを表現できるか、ということに挑戦したかった。悲しみをどう体現して、どうそれを伝えるかを意識したよ。

ーMがパイを食べるシーンでの皿とスプーンがこすれる音、Mが家からの道を歩くときの靴音、そのほか、物語上重要なアイテムでもあるピアノやCの職業が作曲家など、映画を通して“音や音楽、静寂”の印象が強く残っています。音について、意図された部分はありますか?

デヴィット・ロウリー監督:サウンドは僕の映画の中でとても重要な要素だと捉えている。音楽や会話はもちろんだけど、特にパイを食べるシーンでは、後ろで遊んでいる子供たちの声が聞こえるように意識して作っているんだ。実は、この物語や映画のテーマなんかを伝える上で、「音」というのはとても重要なエレメントだった。今回、映画の中のサウンドをどう表現していくか、サウンド・デザイナーのジョニー・マーシャルとよく話し合ったよ。僕は、サウンドによって映画が変容していくのがすごく好きで、サウンドを作っていくのはとても楽しい作業のひとつなんだ。

ーこの作品とは逆の闇を描いたものとして、たとえば、日本には『残穢』『呪怨』のようなその土地に根付いた禍々しいストーリーや映画があります。アメリカでもそういった考えや文化はありますか? その地縛という観点で、過去の映画作品などでインスピレーションを感じた作品はありますか?

デヴィット・ロウリー監督:ホーンテッドハウスを描いた映画作品は大好きだ。アメリカ文化にも昔からある考え方だからね。アジア文化でももちろん、そういう考え方はあるとは思うけど。いわゆるお化け屋敷を描いた映画の中では、オバケは家や場所に取り憑いているという場合が多いと思う。この映画は、そんな、昔ながらのアメリカ文化の要素を取り入れた作品でもあるんだ。『ハロウィン』や『シャイニング』なんかも好きだし、たくさんあって数えきれないよ。

ー今回の物語の死生観は、俗にいうアメリカにおける宗教観、死生観ともちがう気がします。デリケートな部分かもしれませんが、この死生観はどこから影響を受けていますか?

デヴィット・ロウリー監督:僕が生まれ育った家庭は、信仰深い家庭ではあったんだけど、僕自身は宗教や信仰にあまり深く傾倒していないんだ。この映画は、具体的にそういったものを伝えたいというものではなくて、あくまでも、僕の個人的な考えを描いた作品でもある。例えば、パーティーで男が語り続けるシーンなんかもそう。僕が僕自身の存在意義について深く悩んだ時、今後の地球がどうなっていくのか、その中で楽観的に生きていけるのか、といった恐怖を抱えて眠れない日もあった。その男のセリフは、その不安を乗り越えて生きていく術を考えようと思って思いついた言葉の数々でもあるんだ。心の平穏を取り戻そうと思ってね。

ー「A24」について、他のプロダクションとのちがいや、やりやすさについて教えてください。

デヴィット・ロウリー監督:A24はすごく独創的な会社だね。映画を手作りしている感覚で仕事ができた。いわゆる商業的な映画としてではなく、僕が「作りたい」「やってみたい」と思った作品を作らせてくれたんだ。基本的には、スタジオにはスタジオごとで違いがあると思っているよ。それぞれ、その映画にあったスタジオがきっと存在するんだ。今回のような実験的な映画は、個性的なスタジオである「A24」がぴったりだと感じたし、『The Old Man And the Gun(原題)』(デヴィット・ロウリー監督による作品)もフォックス・サーチライトにぴったりだと思う。僕は、映画にとってのスタジオは、僕らが普段暮らしている家のように捉えているんだ。

Text_Shinri Kobayashi


映画『A GHOST STORY』
公開:11月17日(土)全国ロードショー
監督:デヴィッド・ロウリー
出演:ケイシー・アフレック、ルーニー・マーラ
配給:パルコ
コピーライト:©2017 Scared Sheetless, LLC. All Rights Reserved.

Source: HOUYHNHNM(フイナム)
ケイシー・アフレックとルーニー・マーラ主演『A GHOST STORY』。新しい映画文法によって描かれる死後の世界。