TUDORは、なぜファッションのプロからも支持を集めるのか?

ディストリクト ユナイテッドアローズの吉原隆さん(55歳・写真右)と、ファッションデザイナーの尾崎雄飛さん(39歳・写真左)。ファッションに精通する2人は、世代が違うにも関わらず10年以上前から同じ腕時計ブランドに注目する。

それが、今年10月末に日本デビューを果たしたばかりの「チューダー」だ。彼らはなぜ、チューダーに惹かれるのか。ファッション面、そしてデザイン面から、チューダーの魅力について熱く語り合った。

ファッションのプロが語る腕時計の原体験

尾崎 吉原さんが今日されているチューダー、格好いいですね! ケースの大きさもちょうどいい感じで。いつ頃購入されたものなんですか?

この日、吉原さんが着けていたのは1970年代に発売されたチューダー「クロノタイム」。“タテ3ツ目”が特徴的な自動巻き。

吉原 1987年頃かな。実はこれ、僕が手にした最初のチューダーで。当時、時計好きの同僚が愛用していたんですが、あるとき手放すと言い出して。正直自分もそんなにお金を持っていたわけじゃないんだけど、買い値が12万5000円と聞いたから「今、7万円なら持っている。それでよかったら譲ってくれない?」って持ちかけたんです。

尾崎 7万円で買ったんですか!?  それはめちゃくちゃいい買い物ですね。

吉原 そうなんですよ。当時はこればっかりしてました。よくスーツに合わせていましたね。

尾崎 時計はそれからも継続的に買っていたんですか?

吉原 当時の職場にあらゆるものに造詣が深く、時計もずらりとお持ちの大先輩がいらっしゃったんです。かなり影響を受けましたね。その人がポルシェデザインの時計を何本も持っていて、そのうちのひとつがIWCの「ワールドタイム」。ポルシェデザインが欲しかったというのもあるけれど、そもそもIWCでいちばん安かったのが当時ポルシェデザインだった。で、そのときも大先輩から20万円で譲ってもらいました。

尾崎 なんと! 僕が20歳のときに初めて買った時計もIWCの「ワールドタイム」です!

吉原 へえ、本当に?

尾崎 まだファッションの世界に入る前で、これからショップのバイヤーになろうかという時期で。今後仕事をしていくうえで、海外と日本との2カ国の時間を表示できるというのは実用的でもあるし、「頑張るぞ!」という気持ちを込めて買ったんです。

吉原 いい時計なんですよ。今も持っているんですけど、残念ながらちょっと壊れちゃっているんですよね。で、僕のほうも験担ぎじゃないけど、その大先輩からワールドタイムを買ったあたりから、“時計運”がこっちに向いてきたような気がするんですよね。

[nextpage title=”貴重なヴィンテージチューダー、公開!”]

2人のチューダーとの出会い、惹かれるワケ

吉原 次に手に入れたのが、’78年に発表されたポルシェデザインの真っ黒な「コンパスウォッチ」で、これもどういうわけか自分のところに舞い込んできて。そうこうするうちに’90年代に入って、スウォッチとかGショックとかが流行り始めて、その辺もひと通りハマりましたね。昨日、家でこのチューダーの箱を探していたら、スウォッチが20本くらい出てきましたよ(笑)。

それで出てきたのがこちらの箱。ペーパー製の外箱もギャランティも残っている。
こちらがギャランティ。香港のショップで購入したことがわかる。

尾崎 ちゃんと取っておいているのがすごい(笑)。

吉原 僕は時計の中身のことはまったくわからないから、選択の理由は単純に「格好いい!」という直感だけ。だから、複雑な機械のゼンマイ式が欲しいとか、そういうのもまったくないんです。

尾崎 そういう意味でチューダーはぴったりのブランドだったわけですね。

吉原 しかも’80年代にはチューダーはまだそんなに高くなかったし。当時でもロレックスの「デイトナ」はウン十万円はしていたと思うので手が出なかった。それでも、このクロノタイムをしてショップに立っていると「いい時計していますね」とお客様から声をかけられていましたよ。尾崎さんは何本チューダーを持っているの?

尾崎 3本です。小ぶりなものばかりで、クラシックな顔のものが多いですね。

尾崎さんが持つ10数本の腕時計のうち、3本がヴィンテージのチューダー。かなりのチューダーラバーぶり。いずれも小ぶりなサイズ感。

吉原 すべてヴィンテージで買ったんですか?

尾崎 はい、’80年代は子供だったんで(笑)。最初の1本は今日着けているもので、22歳のときに買いました。’40年代のものらしいです。ちょうどショップのバイヤーになった頃にニューヨーク出張があって。アメリカにはずっと憧れていたので、初渡米にいい時計をしていきたいと思ったんですよね。で、いちばん気に入ったこれを選んだんです。

ジャケットスタイルの尾崎さんによく似合う1940年代のチューダー。クラシックで小ぶりなフェイスが印象的。

吉原 憧れのアメリカで買うんじゃなくて?

尾崎 はい、アメリカに着けて行くために日本で買いました(笑)。気合いを入れるためというか。そういう理由がないと、なかなか時計も買えないような年齢だったので。

吉原 わかる、わかる。

尾崎 でも、チューダーといえば本当は通称“デカバラ”に憧れていたんですよ。

1950〜’60年代の一時期生産された、通称“デカバラ”。12時位置のインデックスに置かれた大きなバラが目を引く。尾崎さんは9年前に購入した。

吉原 文字盤の12時位置に大きなバラのインデックスが付いている、これね。

尾崎 ’50年代から’60年代の一時期に作られたもので、僕が興味を持ち始めた当時はそんなに高くない印象だったんですけど、なかなか買うきっかけがなくて。でも9年前、久しぶりにデカバラを見つけたらいつの間にか高くなっていて焦りました(笑)。それで、まだリーズナブルに置いていたショップを見つけて手に入れました。

吉原 このデカバラ、いいよね。オーセンティックで。小ぶりなサイズ感がまたいい。

尾崎 あと、これは2年くらい前に買った「サブマリーナー」のミニサイズ、“ミニ・サブ”です。僕、時計は小さいサイズが好きなので、前からミニ・サブは気になっていたんです。それでこれを見つけたんですが、そのショップにはネイビーダイヤル✕シルバーのモデルと、これがあって。最初はネイビーにしようと思っていたんですけど、すごく悩んだ末に、なぜか変なほうを選んでしまったという(笑)。

「サブマリーナー」のミニサイズ、“ミニ・サブ”。金とステンレスとのコンビが非常に珍しい1本。

吉原 いや、すごくいいですよ! ミニ・サブもずいぶん流行ったけど、初めて見ました、こういうステンレスとゴールドのコンビブレスは。

尾崎 このほうがなかなか出ないだろうなと思って。今ではいい選択だったなと納得しています。

[nextpage title=”ロレックスの安定感に加わる遊び心”]

ロレックスの安定感に加わる遊び心

吉原 そもそも尾崎さんがチューダーを知ったのは何がきっかけだったんですか?

尾崎 先ほども言ったIWCのワールドタイムを最初に買った20歳の頃に、時計にすごく興味を持ったんです。自然とチューダーの成り立ちとかコンセプトについてもいろいろ調べるようになって。ヴィンテージのチューダーはブレスレットがロレックス製だったり、リュウズに王冠が付いていたり、裏にロレックスという刻印があるということも、そのときに知りました。

ヴィンテージのチューダーは、ケースやリュウズなどにロレックス社のものを使用する。こうした小さなところにも満足感があるのだ。

吉原 そういう部分でも満足感があったんですよね。しかも、この価格帯で、という。

尾崎 まだ20代前半だったので、当時ロレックスっていうのは僕の中で大きいというか、大人のものだという感覚がありました。王冠を着ける準備はまだできていないというか(笑)、たぶん似合わないとも思ったので。それでチューダーを探すようになったんですよね。

吉原 あと、ショップのセールススタッフって、どちらかというとマイナーなものに注目するっていう癖があるじゃないですか。へそ曲がりで、天邪鬼(笑)。その感覚にチューダーはぴたりと合っていた。メジャーなところが作っているのに、存在としてはマニアックという。

尾崎 確かに、そうですね。ケースやバンド、中の機構はロレックスと共通する部分が多いのに違うブランドだというのが魅力というか。

吉原 それにケースサイズの絶妙さもいい。ここしばらく流行っていたデカい時計、あれ、全然エレガントじゃないよね。チューダーはスポーティではあるけどバランスがすごくいいと思う。日本人の男性がしてもサマになるサイズ感ですよね。

尾崎 デザインにひと癖あるところも好きですね。この辺りの値の張る時計って、そこまで遊べないところもあるじゃないですか。でもチューダーはちゃんとしている感もあり、遊びも楽しめる。何しろ、ベースのデザインがロレックスでお馴染みなので、基礎は押さえたうえでちょっとハズせるというのもいいな、と。「イカ針」もほかにはない形だし。ところで僕、前から不思議だったんですけど、あれ、なんで「イカ針」って呼ばれるんですかね?

吉原 イカに似てるから? まあ’80年代とかの雑誌が変な名前をつけて、遊んでいた名残じゃないですか(笑)。
※編集部注:日本では伝統的に「イカ針」と呼ぶが正式には「スノーフレーク針」。

[nextpage title=”いやらしい時計好きにはなりたくない”]

チューダーは単なるステータスシンボルではない

尾崎 今、僕の周りでは時計をしない人が多いんですが、吉原さんはやっぱり毎日着けています?

吉原 もちろん。大事な“ブレスレット”ですから、取っ替え引っ替え、いろいろしたいよね。

尾崎 同感ですね。僕の場合、引き算のポジションに時計があって。ビシッとキメて「計算しすぎてない?」っていうところに、わざとチューダーを持ってくることによって、全体の雰囲気を少し柔らかくできる。それができるのもチューダーの魅力です。

ヴィンテージのチューダーについて熱く語り合う吉原隆さんと尾崎雄飛さん。
ヴィンテージのチューダーについて熱く語り合う吉原隆さんと尾崎雄飛さん。

吉原 よくわかる。時計って、ただ時間を知るためのものじゃないからね。ただ、時計がステータスシンボルみたいになってる人もいるじゃない。あれ、いやらしいですよねえ(笑)。その点チューダーを選択するって、ある種そこからは離れていますよね。ステータスを見せびらかしたい人はこのセンスがわからないと思うし。そういう意味では、チューダーって“目立たないようにしている、すごくいい人”みたいな存在(笑)。

尾崎 チューダーって、ロレックスが守っている“王道”から少し外れた魅力がいろいろあるのが面白いな、と改めて思います。

 

上陸したチューダーで2人が欲しいのは?

尾崎 吉原さんがお持ちのもう1本は「ヘリテージ クロノブルー」なんですね。これって、名作の復刻モデルですよね?

5年前に吉原さんが手にしたのは、1971年に登場した名作「オイスターデイト クロノグラフ」の復刻モデル「ヘリテージ クロノブルー」。当時の雰囲気を絶妙に再現している。

吉原 これはですね、大変お世話になっている方から5年前に譲り受けました。僕がクロノタイムをしているのを知っているので、「今のチューダーもしてみたら?」という感じで。以来、気に入って使っています。

尾崎 お持ちの2本のチューダー、どちらもクロノグラフなんですね。

吉原 やっぱり格好いいじゃないですか。自分が小学生ぐらいのときに興味を持ったものって、時計とかクルマだったわけですけど、ちょうどその頃、アニメの『ルパン三世』の第1シリーズの放映が始まったばかりだった。その最初のほうのシーンで、ゼニスの「エル・プリメロ」が出てくるんです。
 
尾崎 へええ、知りませんでした! このモデルはすごく惹かれるなあ。基本的にもっと小ぶりな時計しか持っていないから、今日実物を拝見してお話ししているうちに、すごく格好良く見えてきました。

吉原 (日本での公式販売カタログを見ながら)僕はやっぱり、次に欲しいのはこれかな。「ブラックベイ ダーク」。

「BLACK BAY DARK(ブラックベイ ダーク)」43万5000円/チューダー

尾崎 格好いいですよね! やっぱりオールブラックなところがポイントですか?

吉原 そう、「男」って感じですよね。しかも、このブレスレット付きモデルで50万円を切っているから驚きですよ。

尾崎 えっ! 本当ですか!?

吉原 この「ブラックベイ クロノ」なんて、ブライトリング共同開発のムーブメントが載っていて、50万円前後という。

「BLACK BAY CHRONO(ブラックベイ クロノ)」49万5000円/チューダー

 尾崎 コスパ感、半端ないですね。ただし、ロレックス同様、チューダーもけっこう品薄になるのではという予測が飛び交っていますよ。欲しいモデルが常にないという。

吉原 まあ、いっぱいあるよりいいんじゃないですかね。「え、ないの?」っていうのが、またそそるし(笑)。

尾崎 確かに、着ける側としての満足感は高まるかもしれませんよね。

PROFILE

右●吉原隆さん/ディストリクトユナイテッドアローズでセールスパーソンを務め、カジュアルからドレスまで熟知するファッションマスター。“番長”の名で知られる大先輩。
左●尾崎雄飛さん/「サンカッケー」デザイナー。10代で単身ロンドンに渡り、サヴィル・ロウを訪れたほどのテーラード好き。時計や家具などヴィンテージへの愛も深い。

安藤夏樹=編集 いなもあきこ=文
Source: 37.5歳からのファッション&ライフスタイルマガジン|OCEANS
TUDORは、なぜファッションのプロからも支持を集めるのか?